本の全文横断検索は、アマゾンが先行して始めていた。前年の二〇〇三年一〇月、アマソンーコムは「サーチーインサイドーザーブック(SearchInsidetheBook)」(現在は「ルックーインサイド(LookInside!)」。日本のサイトでは「なか見!検索」)と名づけた本の全文横断検索を開始した。三ヵ月前の七月にはニューヨークータイムズがそうしたことを報じていたが、アマゾンはこの夏中せっせとスキャンしてサービス開始にこぎつけた。フロントーカバーやバッターカバー、サンプル・ページはすでに二年前からサイトで見ることができるようになっていたが、この年の10月二三日には検索語を入れてヒットしたページの前後二ページが紙の本のレイアウトのまま読めるようになった。開始の時点で、ランダムハウスやサイモン&シュスター、ハーバーコリンズなど大手を含む一九〇の出版社の二一万冊、三三〇〇万ぺIジが検索できた。このサービスが一般の読者に多大な恩恵をもたらすことは明らかだった。オンライン書店では実際に本を手にとることはできないが、コンピューター画面上で本のベーシーレイアウトのまま表示され、しかも全文検索できるとなれば、店頭よりも便利な「立ち読み」ができる。また、アマゾン自身が宣伝していたように、読んでおもしろかったという記憶はあるものの著者名やタイトルを思い出せない本を見つけだせる可能性があった。さらに研究者が、自分の研究テーマに関係している本を網羅的に見つけられるばかりか、内容を実際に読んで確かめることもできる。シェークスピアの研究者がシェークスピアについて一語でも触れている新刊本をすべてチェックするといったことまで(時間の余裕さえあれば)夢ではなくなった。本の文化にもたらす恩恵はこのようにきわめて大きかったが、書店はその破壊力をもろにかぶることになるかもしれなかった。店頭で本を見る以上の利便性があり、配達もしてくれ、しかも安く購入できるとなれば、一般の書店が打撃を受けるのは必至だ。アマゾンがいよいよ集客力をアップさせ、オンライン書店も含めて一人勝ちになる。懸念したのは書店ばかりではなかった。書き手の組織・米作家協会は、加盟員に対して警告のメールを出した。時間が経って人目に触れにくくなった本は利益を得るかもしれないが、料理や旅行の本、レファレンス本、学生の副読本については買わずにすます人が出てくることを心配していた。同一の本について読めるのは二割までとか、印刷やダウンロードはできないなどの制限はあったものの、検索してヒットした個所のそれぞれについて前後二ページ表示できるので、学生などが手分けして本に頻出する言葉で検索しウェブ画像をキャプチャーすれば、全ページ手に入れることも不可能ではない。米作家協会はメジャーな出版社の契約書をチェックし、著者の許可なしに出版社がこの検索に応じる権利は持っていないはずだと見解を出した。応じた出版社は、著作権侵害や売り上げ減の恐れに加えて、著者に訴えられるリスクまであったわけだ。にもかかわらず、各出版社はよく承諾したものだと思うが、パブリッシャーズーウィークリーによると、ふだん本を売ってもらっているアマゾンに言われてしぶしぶ承諾したようだ。アマゾンはサービス開始から一週間の時点で最初の結果を発表した。それによれば、全文検索できる本はそうでない本に比べて九%売り上げがあがったという。こ10万タイトルのサンプルにもとづくのだから、統計的に意味のある数字だとアマゾンは述べていた。こうした好調な数字が続くのであれば、米国内ばかりか他国の出版社に対してもまたとない説得材料になる。
[参考情報]
デジタルカタログ活用ガイドホームページ