せっかく買った携帯電話に電話して来てくれる人はいなかった。誕生日にも、鳴らなかった。結局、何もなかった。予想通りとはいえ、さびしかった。会社からの帰りがけ、珍しく携帯電話が鳴った。昔の彼からだった。「どうして、この番号を知ってるの?」「家にかけたら、留守電のメッセージに、携帯電話の番号は……って入ってたよ」「急に、何?」「今から会えない?話したいことがあるんだ」「いいけど……」。ひょっとしたら。君は期待した。でも自分でその期待を打ち消した。そんなことは。「でも、もし……」。期待して裏切られることがあまりにも多かった。「こっち、こっち」。昔、彼とよく行ったレストランに、彼は先に来ていた。「ちっとも変わらないね」「話って?」。君は、わざとそっけなく言った。それは君のうれしさの裏返しだった。「あらっ?」。彼の横に、ちらりと、花束が見えた。君は、見て見ぬふりをしていた。
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