都内の静かなホテルのロビーで会ったMさんは、淡いサーモンピンクの襟なしのスーツに黒のハンドバック、黒の中ヒールのパンプスという服装であらわれた。ひざ丈のスカートといい、ウェストをしぼらないボックス型のジャケットといい、清潔で上品な着こなしに、流行に左右されない地道さを感じさせる。ゆるくウェーブのかかったセミロングの髪型もふくめて、彼女の性格が外見のすみずみにまで出ていた。はずれているところ、浮いているところがどこにもない。そこに私は好感を抱いた。お受験の動機をたずねたところ、「もしも自宅から通学時間三十分以内に私立小学校がなければ、けっしてお受験は考えなかった」と、まず強調した。「主人も私も小学校は公立ですし、主人は地方の公立小学校から公立中学、高校は県立、大学は東大です。彼は基本的には女の子、男の子にかぎらず、私立小学校入学には反対だったんです。反対っていうか、私が相談しても、東京の私立小学校のことなんか何も知らないから、判断しようがないと言われました。彼の育った場所と時代では、私立といえば地方のデキの悪いお坊ちゃんお嬢ちゃんがお金を積んで通うところって感じだったみたいですよ。長女が三歳になったときに受験させようかと相談したら、にべもなく『○○はどこにいっても立派にやっていく。サラリーマンの子どもが私立小学佼なんてとんでもない』と却下です」
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